前編:猫の食性と糖代謝について
近年、ペットの健康志向が高まる中で、毎日のキャットフードの選び方に悩む飼い主さんは少なくありません。今回は、人間の体を熟知する医師の高橋先生と、動物の体を専門とする獣医師の宮島先生による特別対談(前編)をお届けします。
人間や犬と、猫とでは体の構造が根本的に異なります。「良かれ」と思って与えているそのフード、実は猫の体に思わぬ負担をかけているかもしれません。前編では、猫の本来の食性と、市販のキャットフードに潜む「糖質」の問題点について深く掘り下げます。
猫の独特なインスリンと代謝の仕組み
高橋医師
人間においても、体質や食性が臓器の健康に大きく関係していると実感しています。専門の獣医の先生方の間でも、猫には人間より圧倒的にタンパク質の摂取量が必要であり、炭水化物は無くてもいいという認識はあるのでしょうか?
宮島獣医師
おっしゃる通り、猫は完全な肉食動物です。もう少し踏み込んでお話しすると、犬や人間に当たり前のように備わっている「肝臓の糖代謝酵素」が、猫には無いに等しい状態なのです。猫は本来、アミノ酸から糖を作り出して代謝しています。
また、インスリンの働きにも違いがあります。人間や犬は「甘み」を感じることで、体が事前にインスリン分泌の準備を始めます。しかし、猫はそもそも「甘みを感じない」動物です。野生の猫は狩りをして「骨格筋を動かす」ことでインスリンの感受性を上げ、獲物を食べてから糖代謝を行うという、根本的に異なる仕組みを持っています。それなのに、人間の都合で作られた炭水化物をたっぷり含むキャットフードを与え続けることは、猫の自然な代謝に反しており非常に問題だと考えています。
また、インスリンの働きにも違いがあります。人間や犬は「甘み」を感じることで、体が事前にインスリン分泌の準備を始めます。しかし、猫はそもそも「甘みを感じない」動物です。野生の猫は狩りをして「骨格筋を動かす」ことでインスリンの感受性を上げ、獲物を食べてから糖代謝を行うという、根本的に異なる仕組みを持っています。それなのに、人間の都合で作られた炭水化物をたっぷり含むキャットフードを与え続けることは、猫の自然な代謝に反しており非常に問題だと考えています。
高橋医師
人間でも、余分な糖がタンパク質にくっついて機能を失わせる状態(2型糖尿病のヘモグロビンA1cなど)がありますが、代謝の仕組みが違う猫にとっては、それがもっと重大な状態を引き起こすということですね。
キャットフードの問題点と肥満
高橋医師
一般的な固形のキャットフードは糖質が多いイメージがありますが、成分表記の上位(1〜3番目)に糖質が含まれているフードは避けた方がよいですか?治療段階であれば糖質はカットすべきでしょうか?
宮島獣医師
そうですね。実はフードの糖質量は、成分表記から引き算をしていかないと正確には分かりません。しかし目安として、糖尿病の猫の治療で推奨される糖質量(必要なエネルギーあたり12%以下、あるいは100キロカロリーあたり3グラム以下)という数値があります。興味深いことに、私が「猫に本来適した食事」を計算すると、まさにこの治療食の数値とぴったり合致するのです。つまり、病気になったから「治療」として糖質を制限するのではなく、本来そのレベルであるべきだということです。
先ほど申し上げた通り、猫は甘みを感じてインスリンが先に反応する仕組みがないため、炭水化物主体のフードを食べると余計に血糖値が上がりやすくなります。これが肥満の大きな原因です。高齢になるまで「太っていて可愛い」と放置されがちですが、それが進むと「サルコペニア(筋肉減少症)」に陥ります。筋肉が落ちて代謝が下がり、さらに脂肪が増え、関節炎を併発するという悪循環に陥っている猫ちゃんは非常に多いのが現状です。
先ほど申し上げた通り、猫は甘みを感じてインスリンが先に反応する仕組みがないため、炭水化物主体のフードを食べると余計に血糖値が上がりやすくなります。これが肥満の大きな原因です。高齢になるまで「太っていて可愛い」と放置されがちですが、それが進むと「サルコペニア(筋肉減少症)」に陥ります。筋肉が落ちて代謝が下がり、さらに脂肪が増え、関節炎を併発するという悪循環に陥っている猫ちゃんは非常に多いのが現状です。
「糖尿病になってから糖質を制限する」のではなく、「本来の猫の食事が低糖質である」という宮島獣医師の言葉にはハッとさせられます。
続く後編では、なぜこれほどまでにドライフードが普及しているのかという獣医療の裏側と、「猫=魚が好き」というイメージが引き起こす腎臓への負担についてお話しいただきます。