後編:猫の食性と糖代謝について

人間の医師・高橋先生と獣医師・宮島先生の特別対談、後編をお届けします。

前編では、完全肉食動物である猫にとって、炭水化物(糖質)を多く含むフードがいかに不自然であり、肥満や筋肉減少の悪循環を招くかについてお話しいただきました。
では、なぜそうしたフードが当たり前のように流通しているのでしょうか?また、私たちが信じて疑わない「猫は魚が好き」という常識は本当に正しいのでしょうか?後編では、飼い主の意識と獣医療の現状、そして高齢猫に多い「腎臓病」の本当の原因に迫ります。

飼い主の意識と獣医療の現状

高橋医師
食事の成分が重要だと分かっても、ペットは自分で食事を選べません。人間の思い込みで「色々な味(甘いものやおやつ)を楽しみたいだろう」と与えてしまうことも多そうですが、飼い主さんの理解は得られるものですか?また、動物たちは毎日同じ食べ物で飽きないのでしょうか。

宮島獣医師
そこはなかなか難しい問題です。ネットで検索すればドライフードがおすすめされ、獣医師の多くも「キャットフード(ドライ)が当たり前で、すべてのバランスが取れている」と思い込んでいる背景があります。実は、獣医学の大学教育において「栄養学」はあまり深く教えられていないのです。
食事のバリエーションについても、野生のオオカミやネコ科の動物が食べているものは、ネズミ、小鳥、虫、カエルなどの爬虫類など、ほぼ単一のものです。人間の思考を押し付けて「色々な甘いものやおやつが必要だ」と考えるのは間違いです。100%ウェットフードを基本とし、その中で多少の味の変化をつける程度で十分なのです。

海産物と腎臓への負担

高橋医師
もう一つ気になっていることがあります。猫は海に潜って獲物をとるわけではないので、元々砂漠など内陸の乾燥地域を起源とする猫には、そもそも「海産物を処理する代謝機能」がないのではないでしょうか。人間でも一部の体質の人は、エビやカニ、海の魚などの海産物をやめると治る病気があります。

宮島獣医師
おっしゃる通りです。「猫と言えば魚」というイメージは、魚を食文化とする日本特有のもので、ヨーロッパなどでは異なります。実際、新鮮な魚だけを与え続けると猫は病気になってしまいます。
最近、高齢猫の腎臓病に対して「特定のアミノ酸サプリメント」が有用であるというデータが出ています。しかし私は、そのアミノ酸こそ「猫が本来の食事(動物性タンパク質)から摂取しなければならなかったのに、長年取れてこなかったもの」だと考えています。腎臓が悪くなってから慌ててサプリで補うのではなく、日頃から猫に適したタンパク質の組成が必要であり、それをおそらく「魚」では補いきれないのだと思います。

高橋医師
海にいる生物たちは、海水をろ過して生きるため、そもそも「腎臓の代謝が非常に良い生き物」です。内陸の遺伝子を持ち、元々魚を食べてこなかった猫が、そうした成分(海産物のタンパク質)を摂取することが、逆に猫の腎臓を壊し、負担をかけている可能性が高いということですね。これは非常に面白い視点です。

前後編にわたってお届けした、医師と獣医師による特別対談。
「市販のキャットフードなら完璧なはず」「猫は魚が好きなはずだから」という私たちの思い込みが、実は無意識のうちに愛猫の健康、特に腎臓に大きな負担をかけていた可能性があるという事実に、気付かされる内容でした。

良かれと思って与えているおやつや、毎日のドライフード。大切な家族である猫ちゃんにいつまでも元気で長生きしてもらうために、私たち飼い主が「本来の動物の食性」を正しく理解し、食事のあり方を見直す時期に来ているのかもしれません。

 

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