信州の自然と菌のチカラで美味しくなる

2024.12.24

高山村にある生ハム工房・豚家「TONYA」さんを訪ねました。
菌のチカラを借りて2年以上熟成される、ハモンセラーノを取材しました。

2年熟成のハモンセラーノ

 

こんにちは、編集部の松沢です。

2024年10月のとある日、信州あおぞらみーる作り手の純子さんと高山村にある「生ハム工房 TONYA」さんへお伺いしました。

ご案内してくださったのは、代表の佐藤明夫さんです。

生ハム工房があるのは、長野県高山村の標高850mほどのブドウ畑の中。
高山村は北信五岳を望む傾斜地で、美味しい果物やワイン用ブドウの産地として長野県の中でも有名な場所です。

車を降りると、なんとも清々しい空気と一面にワイン用ブドウ畑が見渡せる素敵な眺望が広がっていました。

TONYA
TONYA

今回は、生ハム工房の取材ですが、オーナーの佐藤さんは、ブドウ栽培を長年されている農家さんでもあり、シャトーメルシャンや小布施ワイナリーなどの契約農家として、お父様の代からこの地でワイン用のブドウ栽培をされていらっしゃます。
30年以上の栽培キャリアをもち、ほ場約4ヘクタールにピノノワールとソーヴィニヨンブランを育て、ぶどうを提供したワインは国内外のワインコンクールで受賞歴も多い実力派。

そんな佐藤さんがあるとき、ワインのおつまみとして出されたスペイン産の本物の生ハム「ハモンセラーノ」に出会い、「このおいしい生ハムを毎日食べたい!」と、思ったところから「生ハム工房 TONYA」は始まりました。

これは、嘘のような本当のはなしで、自己流で、生ハムづくりをスタートしたのは2013年頃のこと。
生ハムの仕込みが冬が適していて、ブドウ栽培の繁忙期と季節がずれていたことも、工房の立ち上げを後押ししたのだそうです。

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佐藤さんは、インターネットで生ハムづくりについて調べてみますが、その当時、情報は殆どなかったそうです。

「唯一、秋田県内の生ハム工房で生ハムづくりができると聞き、そこに伺って製法を学ぶことにしました。僕が習いに行った日は偶然にも生徒は僕だけで、マンツーマンで色々教えていただけたんです」と佐藤さん。

秋田から戻ると、農園の一角で試作をし繰り返したそうです。

「習ってきた方法と自分でもう少しこうしたほうがいいのではないかと思った方法の2つを試すと、やはり教わってきたほうが美味しいんです。何年かかけて色々試して、はじめて食べた生ハムの美味しさを再現できないかと試行錯誤をしました」。

その中でわかってきたことは、上質な生ハムをつくるには、夏も30℃を越えない気温と、年間を通して適度な湿度が必要だと言うことでした。
工程もわかり、ある程度美味しい生ハムが作れるようになった佐藤さんですが、探究心がなくなることはありませんでした。

「自分のつくった生ハムは、本場のやり方と近いのではないかと考えるようになり、本場に行って確かめたいと考えたんです」。

その熱意あるお話に、ワインメーカーの知人がスペインのハモンセラーノ工場とのご縁を繋いでくださり、佐藤さんは海を渡ります。

「現地に行って驚いたのは、製造の規模感の違い。本やネットで見るのとはまったく違いました。ただ、現地の生ハム職人さんと話をする中で、自分でやっているやり方を『独学でよくそこまでやっている』と言っていただき、自分の作り方・やり方に確信を得たところがありました。自信にもつながりました」

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生ハムには大きく分けて2種類の製造方法があり、発酵工程を経て作られているのが、スペインで作られる「ハモン・セラーノ」やイタリアの「プロシュート」です。

肉を加熱せず(生のままで)長期間かけて乾燥、発酵熟成させる製造方法で、熟成の過程で白カビなどの菌が乳酸発酵します。
表面にカビが付着することで表面からの腐食を防ぎ、発酵する際にたんぱく質がアミノ酸へと分解され、旨味が増すのです。

もう一つは、日本のスーパーなどでよく見る「ラックスハム」で、発酵工程を経ていないものがほとんど。
塩漬けし、2日ほど乾燥、燻製させる製法で、乾燥期間も短いために水分量が多く塩気としっとりした食感が特徴です。

日本ではすべてまとめて「生ハム」と呼ばれているので、発酵している生ハムと、発酵していない生ハムが存在している、ということになるのです。

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さて、佐藤さんのつくる生ハム=ハモン・セラーノは、噛めば噛むほど旨味の出てくるような深い味わいが魅力。
たくさんの原木が吊り下げられた工房に入ると、芳醇な香りが満ちていました。

ここでは、オーナー制度で自分の生ハムづくりができます。
原木を使って仕込みを行うと、菌がつく状態を見ながら佐藤さんが生ハムになるまでの2年間、面倒を見てくれるのです。
同じ原木、同じ場所で作っても、つくり手によって味が変わるそうです。

TONYA
TONYA

 

生ハムづくりを始めたきっかけはご自身でたくさん生ハムを食べたかったからと伺いました。

(佐藤さん)ブドウ栽培の仕事をしていると、ワインを飲む機会も多くあるのですが、あるとき試飲会のような場で生ハムを食べて衝撃を受けたことがきっかけです。
噛めば噛むほど旨味が広がるようなハモンセラーノだったのですが、これを食べた時に「毎日でも食べたい」と思い、自分で作ることができないかという思いに至ったことがきっかけです。これは本当です。
いろんな生ハムを食べて来ましたが、やはりあの最初に食べた生ハムの味と衝撃は忘れることができず、それを目指してやってきました。

 

佐藤さんの生ハムは、誰に聞いても美味しいと話されます。その美味しさの秘訣は?

(佐藤さん)生ハムを熟成させるのは乳酸菌の一種やカビによる発酵によるものです。
工房の温度管理はもちろんするのですが、この土地の菌と気候が美味しい生ハムを育んでくれていると思います。
手をかけすぎずに見守っています。
 

生ハムの仕込みにはどのようにしたら参加できますか?

(佐藤さん)オーナー制度で自分の生ハムづくりをしていただけます。
熟成期間は最短で2年間なので、2年後に完成品を取りに来ていただくか、お送りする形となります。
完成の際には、ハム完成パーティーに無料ご招待の特典付きです。
2024年・2025年の日程は、概ね下記になりますが、空き状況等はお電話・メールでご確認ください。

 

 

□ 生ハムオーナー募集要項(2024年12月現在の情報です)

・2024年11月24日〜2025年2月23日の毎週日曜日
※ 10時〜・12時〜・14時〜 説明、作業で約1時間程度
・3工程の家最初の工程、原木の血抜きと塩の刷り込み作業を体験
・後工程(熟成期間)は、豚家さんがお引渡しまで大切に管理してくださります。
・料金:原木1本(仕上がり7kg前後) 43,000円

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