愛情たっぷりに育まれた、こだわりのお米と玄米コーヒー
2025.06.02
北アルプスの雄大な山々と、その源流から流れる清冽な水。
安曇野の原風景が広がる、長野県松川村の「お結び自然農縁」さんを訪ねました。
体調不良をきっかけに、食の大切さに気付いて就農
長野県の北西部、北安曇郡松川村で愛情たっぷりのお米作りをされているのが「お結び自然農縁」さんです。
お結び自然農縁という名称は「おむすび(お米)」を通じて、多くの人々と素敵な「ご縁」を「結び」たい、という願いを込めて付けられたものなのだそう。農業を始められた当初からこだわっているのは、無農薬栽培、無肥料栽培など、化学的なものに頼ることなく、愛情をかけてお米を育てるということです。
「安曇野は3000メートル級の北アルプスから流れ出たミネラル豊富な水と冷涼な空気がお米の味を引き立ててくれるような土地のチカラのある場所です。昼夜の寒暖差がより旨味のあるお米を育んでくれるのです」と、教えてくださったのは農園主の貞光さんご夫妻です。
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大阪出身のご主人(健史さん)と横浜出身の奥様(実里さん)が農業を始めるために長野県に移住したのは2014年。ご夫婦が農業法人で1年間研修を受けた後に移住されました。最初は大町市の市営住宅に移り住んだそうですが、より農業をしやすい土地と住まいを探し、松川村の農業支援センターの紹介で2016年に松川村に引っ越して、この地で本格的に農業を開始されました。
そもそも、農業を始めたきっかけは、健史さんが移住前に体調を崩していた時期に、食養生の先生に言われた言葉が大きく影響しているのだそう。
「日本人の身体は特に”お米が大切”と言われたことが印象として残っており、『男』という漢字は『田』に『力』と書く。田んぼで力作業つまりお米を作る事ができてこそ一人前の男だと。なるほどと思い、それが米作りを始めるきっかけになりました」と、健史さんは話します。


美味しいお米と玄米コーヒー
お結び自然農縁さんのお米へのこだわりは、以下のように紹介されています。
<お米へのこだわり>
無農薬栽培(除草剤・殺菌剤・殺虫剤などを一切使用しません)
無肥料栽培(化学肥料はじめ有機肥料・堆肥なども一切使用しません)
天日干し(自然の力でお日様にじっくり乾かしていただきます)
自家採種(毎年田んぼで育ったお稲さんから種を採っています)
籾で保存(昔ながらの土蔵で玄米にせず、籾で保存しています)
愛情(毎日声をかけているとお稲さんも喜んでいるように思います)<お米の品種>
昔ながらの在来種「亀の尾」「朝日」などを栽培しています。<加工品・その他>
「玄米コーヒー」「お米さんのめん(玄米麺)」などを販売しています。
「亀の尾」は、百年以上前から受け継がれてきた山形県生まれの在来種で、今では「幻のお米」と呼ばれている品種。はざかけ・天日干しで、たっぷりと太陽の光を浴びて出来上がったお米は、その美味しさはもちろんのこと、エネルギーにも満ち溢れているようです。
そして、編集部で大変気に入っていただいているのが「玄米コーヒー」。
12時間じっくりと焙煎しているだけあって、ほとんど粉状ですべてお湯に溶けるので、丸ごと玄米の栄養素をとることができる満足感があります。しかも、無農薬栽培の香り米”亀の尾”という贅沢さ! 元はお米なので、和食の時でも違和感がありません。これだけでもとっても美味しいのですが、コーヒーと半々でブレンドするのもおすすめです。
(実里さん)私は体が敏感で、毎年、地区で農薬散布が行われると、その度に40度近い熱を出して数日間寝込んでいました。我が家の玄米コーヒーを飲むようになってからは、身体が排毒できるようになったようで、その後は寝込むことがなくなりました。今では毎日玄米コーヒーのデトックス効果を実感しています。
松川村に移住した理由は?
(健史さん)就農地に長野県を選んだのは、この地域にご縁を感じたからです。米作りをしようと決めたものの、なかなか場所が見つからない状況が続きました。それまで長野県には登山では度々訪れていましたが、雪が多いので敬遠していました。でも好きな地域だったので一度行ってみようと、2014年の2月に大町市を訪れました。大雪の年でしたが、私たちが滞在した4日間は晴天で、まるてこの地域に呼ばれているかのようでした。その後、3年弱大町市で過ごした後、近隣の地域からお米が美味しいと言われていた松川村へ引っ越しました。
農薬や肥料を使わずにお米作りをされています。苦労も多いのでは?
(健史さん)農薬を始めてから数年は、特に除草作業には泣かされました。田植え後、ほぼ毎日、朝から夕方までひたすら草取りの日々が1か月以上続きました。3年目頃からはイネミズゾウムシという稲の根を食べる虫にも泣かされました。田植えと同時に稲の根を食べて瞬く間のうちに苗を枯らすのです。1匹1匹手で取ったり、田んぼの水を抜いて土を固めたり(水を抜くと草がいっぺんに出てきて除草が大変になります)と、無農薬の大変さを思い知らされました。また、私たちは「美味しいお米を作りたい」という思いから常識にとらわれず、いつも無謀とも思えるようなことにも挑戦してきました。そのため、何度も失敗し、その度に何度心が折れそうになったかわかりません。それでも「今年こそは」と、毎年試行錯誤をしています。はぜかけ(天日干し)は手間がかかるので大きい面積はできず、1町歩(1ヘクタール)のほ場で栽培しています。育てているお米は、「亀の尾」と「朝日」という在来種です。亀の尾は山形県の品種で、冷害には強いですが暑さには弱い。朝日は岡山県の品種なので暑さには強く、温暖化による気候の変化にも適応しています。
農園では加工品も販売しています。日本酒も作られたそうですね。
(健史さん)加工品は、お米の麺と玄米コーヒーを販売しています。私はあまりお酒を飲まないのですが、長野県に来て日本酒を飲んだときに、とても美味しく感じました。やはり安曇野の地域は北アルプスの雪解け水の影響が大きいのかと感じました。
「亀の尾」は酒米にもなるお米です。むしろ酒米と言った方が良いのかもしれません。私たちは酒販免許を持っていませんが、漫画「夏子の酒」でモデルとなった「亀の尾」でいつか日本酒を作ってみたいと思っていました。そこで池田町の福源酒造さんとのご縁により、念願叶い、醸造してもらう事ができました。
「お結び自然農縁」のお米「亀の尾」を「福源酒造」さんで作っていただいたので、それぞれの文字を取って「亀の福結び」と名付けました。「亀さん」がたくさんの「福」を「結んで」くれるようにと願いを込めて!
(実里さん)その酒造会社さんがある旅行会社にうちの農園を紹介してくれたことがきっかけで、5年間外国人観光客を受け入れています。参加者の国籍は、アメリカやイギリス、シンガポール、香港などさまざまです。ツアーでは、かまどでご飯を炊いて、野菜をたっぷり入れた汁物と一緒にお出ししています。お餅つきの体験もあり、ワイワイと楽しんでもらっています。


お米作りで大切なことは何ですか?
(健史さん・実里さん)お米作りで一番大切なのは、作り手さんの思い・愛情ではないでしょうか。
「稲は人の足音を聞いて育つ」と言います。
私たちは種まき後、まだ苗にもなっていないときから毎日、稲もみさんたちに「大丈夫だから頑張って芽を出そう!」「みんなで田んぼにいくよ!」と声をかけています。田植え後は雨の日も、風の日も毎日田んぼに行ってお稲さんたちに「いつも美味しいお米をありがとう」「私たちを元気にしてくれてありがとう」と声をかけています。
お稲さんたちは生きています。言葉は話しませんが、私たちの声は聞こえていると思います。私たちの声に対してそうなろうと頑張ってくれているように思います。
愛情を持って育てたお米であればどのようなものでも素晴らしいと思います。

貞光さんご夫婦の思いがいっぱい詰まったお米は、間違いなく美味しいはず。その味を想像して、ワクワクしながら家路につきました。
また、ご厚意で、お土産に亀の尾で醸造したお酒までいただきました。 ていねいにお酒を醸すとこんなふうにできるのだと思わせる、懐かしくほっとする味わいで、院長いわく「御神酒だったら神様が喜んでくれそう」と話していました。
「地の物」が私たちの身体を元気にしてくれる…ということを、信州あおぞらみーるの取材を通して、ひしひしと感じるこの頃ですが、やはり身体に良いものを自分で選んで口にしていくことの大切さを感じた取材でした。
□ 商品ラインナップ
・米
・米の麺
・玄米コーヒー
・日本酒(福源酒造で販売中)
