森の恵みと伝統医学で心身を調える、山里の薬房

2026.07.23

上田市の別所温泉から車で5分。薪が美しく積まれた小さな薬房は、標高700メートルの静かな山里にあります。豊かな森に囲まれたこの場所には、街なかとは違う清々しい空気が漂っています。

チベット医学を学んだ後、上田市へ移住

 
今回ご紹介する「絵本と薬 森のくすり塾」は、薬剤師の小川康さんと、元保育士の美紀さんご夫婦が営む薬房です。
その存在を知ったきっかけは、以前にお話を伺った自然食品の店 のうのうさんからのご紹介でした。実は小川さんは、過去に当サイトで取材させていただいた黒姫和漢薬研究所で働かれていた経歴もお持ちとのこと。
人や地球にやさしい取り組みをされている方々は、いろいろなところで深くつながっているのだと改めて実感させられます。

小川さんは富山県のご出身で、大学の薬学部を卒業された後、国内でさまざまな経験を積まれました。その後、単身でチベットに渡り、現地で10年間かけてチベット医学を学ばれたという異色の経歴の持ち主です。
ご結婚後、二人で上田市別所温泉へ移住し、「絵本と薬 森のくすり塾」を開塾されました。

「うちに来るお客さんは、現代の一般的な医療にはないアプローチを求めている方が多いです。僕は薬剤師ですが、臨床の最前線にいるお医者さんに比べれば、医学的な知識量には差があるかもしれません。でも、時には情報が多すぎないからこそ、物事の本質を捉えたシンプルな答えを出せることもあるんです。
幸いなことに、僕の周りには素晴らしいお医者さんがたくさんいます。中には、半農半医を実践されているドクターなど、伝統的な医学に深い理解のある先生もいらっしゃるので、お客さんに紹介させてもらうことも多々あります」

店舗外観
店主の奥様

 

消えゆく伝統薬の魅力を伝えて

 
薬房の建物は、地元の大工さんと一緒にご自身で建てられた。木の温もりが感じられる店内には、厳選された医薬品をはじめ、体にやさしい薬草茶、お香、入浴剤などが丁寧に並べられています。

「うちは薬店としての許可は取っていますが、調剤は行っていません。現代社会では、劇的に効く即効性や便利さが薬に求められがちです。しかし、劇的な変化はなくても、じわじわと身体を根本から支えてくれる良い伝統薬はたくさんあります。
いま、そうした古き良きものが次々と市場から消えようとしています。伝統薬を作る製薬会社は職人気質で、宣伝が苦手なためになかなか売れない現状がありますが、どれもストーリー性があって面白いんですよ」

パンの商品
パンの商品

小川さんは薬の販売にとどまらず、薬に関する講演やワークショップも精力的に行っています。最近では、現代医療の現場に悩む薬剤師が小川さんのもとに相談に訪れることも増えているそうです。

「一般的に、医師の処方せん通りに薬を出すのが薬剤師の仕事。仮に『この処方量は多すぎるのではないか』と疑問に思っても、従わざるを得ないのが実情です。『必要以上に薬を出したくない』と真摯に考える優しい薬剤師ほど、ジレンマを抱えて職場を辞めてしまう。本当は、そういう感性を持った人たちにこそ、医療の現場で続けてほしいのですが……」

『絵本と薬』の掛け合わせで、誰もが立ち寄れる場所に

 
もう一つ、絵本と薬 森のくすり塾がユニークなのは、『絵本と薬の店』という看板を掲げていることです。店内の一角には、美紀さんの選書によるさまざまな絵本が並びます。なぜ、薬房に絵本を置くようになったのでしょうか。

「最初は薬だけを置いていましたが、そうなると、どうしても身体の具合が悪い人しか来られない場所になってしまう。病気の人だけでなく、誰でも気軽に立ち寄ってほしいという思いから、2019年に店舗内に絵本コーナーを新設しました。
よく薬剤師向けの講演会を開くのですが、そこで僕が話すのは『これからは薬だけの時代じゃない』ということ。『音楽と薬』でも『花と薬』でもいい。自分たちの好きなものと薬をかけ合わせていくと、医療の枠を超えた面白い変化が生まれると思っています」

パンの商品
パンの商品

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私が副院長を務める長野県中野市の「たかはしクリニック」には、対症療法ではなく、身体の根本的な治療や体質改善を求めて、上田市からも多くの患者さんが足を運んでくださいます。中には「病院でワクチンを受けたくないと話したら、医師から怒られて傷ついた」と駆け込んで来られる方もいらっしゃいます。

現代の西洋医学か、それとも伝統医療や自然療法かという「白か黒か」ではなく、お互いの良いところを認め合えるような、バランスのとれた医療のあり方が日本の社会にもっと広がればと願っています。
たかはしクリニック公式サイト

 

□ 商品ラインナップ

・日本の伝統薬
・入浴剤
・麦芽飴
・お香
・絵本 ほか

店舗内の様子

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