日本酒の基本となる種類や用語、ラベルの読み方など知れば知るほど深い日本酒の世界。
ビギナーはもちろん、日本酒ラバーも再確認してみると、またひと味違った日本酒の味わい方・楽しみ方ができます。
日本酒の元となる「米」と「水」。
日本酒が完成するまでにはさまざまな工程や人の手が加わっており、その一つひとつのこだわりが日本酒の味を造りあげます。
日本酒用の酒米は米全体のわずか2%前後ですが、栽培品種は90種類以上
日本酒の主要原料のひとつである米は主に「酒米・酒造好適米」と呼ばれる米が使われます。米は日本酒の仕込みだけではなく、麹と呼ばれる麹菌を繁殖させたものや、酒母と呼ばれる日本酒のベースとなるものにも使用。日本酒造りの米は白米の状態で使われます。ご飯用の白米が外側を10%程度削られるのに対し、酒造用の米はさらに削られ、美しく輝きます。そのあと、米は機械や人の手によって洗米され、水分を取り入れるための浸漬(しんせき)、蒸米という工程を経て、それぞれの作業に使用されることになります。
原料となる米の不要な部分を削る
米の表面に残っている糠(ぬか)などを洗い流し米に吸収させる
雑菌の作用を受けやすくするために米を蒸気で加熱する
蒸した米に麹菌を繁殖させる
酵母を育てるための酵母(酛(もと))を造る
仕込みタンクに酒母(酛)を入れ、蒸米・麹・水を数回に分けて加えてアルコール発酵を行う
醪を酒と酒粕に分ける
水を加え、アルコール度数を調整する
水を加え、アルコール度数を調整する
温湯に通して雑菌、酵素の働きを止める
同様に、湯温に通して雑菌、酵素の働きを止める
みなさまのもとに届きます
日本酒には、原料や製造方法などの違いによりその種類が細かく分類されています。
日本酒を製法で分類したものが「特定名称」。「特急」「一級」「二級」と級別に分かれていた時代もあったとか。日本酒の多様化により今の分類になりました。
日本酒には、特定名称酒と呼ばれるものがあります。
例えば長野県のお酒「水尾」も3種類以上存在し、その違いによってラベルのデザインやビンの色が違います。
基本の3種類はこちら。違いは原料と精米歩合にあります。
純米酒または本醸造酒で、精米歩合※160%以下、まで高度に精米した米を使い、提案でゆっくりアルコール発酵させるなど、特別に吟味して醸造した酒。
米、米麹※2のみを原料に醸造。米に由来する風味豊かで、一般的に旨味やコク、ふくよかさなどの特徴が強く出る濃醇なタイプが多い。
米、米麹に少量の醸造アルコール※3を加えて造る。純米酒は醪をそのまま絞るが、本醸造酒は絞る前に少量の醸造アルコール味で調整する。
※1 玄米を削った割合のこと。精米歩合60%は、表層部を40%削り取りこと。削るほどに雑味が減り、すっきりした味わいになる
※2 蒸した米に麹菌を繁殖させたもの。蒸米と酒母(酵母)、米麹、水を入れて仕込みを行う。麹菌の酵素がデンプンを糖化し、酵母がその糖分をアルコール発酵する。
※3 さとうきびの糖蜜や米殼類などの含糖分質、デンプン質を原料とし、蒸留されたアルコール。絞る前の醪に適量添加すると香りが高く、すっきりとした味わいに。
特定名称 | 使用原料 | 精米歩合 | 麹米使用割合 | 香味等の要件 |
---|---|---|---|---|
本醸造酒 | 米、米麹、醸造アルコール | 70%以下 | 15%以上 | 香味、色沢が良好 |
特別本醸造酒 | 米、米麹、醸造アルコール | 60%以下または 特別な製造方法 |
15%以上 | 香味、色沢が特に良好 |
吟醸酒 | 米、米麹、醸造アルコール | 60%以下 | 15%以上 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好 |
大吟醸酒 | 米、米麹、醸造アルコール | 50%以下 | 15%以上 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好 |
純米酒 | 米、米麹 | - | 15%以上 | 香味、色沢が良好 |
特別純米酒 | 米、米麹 | 60%以下または 特別な製造方法 |
15%以上 | 香味、色沢が特に良好 |
純米吟醸酒 | 米、米麹 | 60%以下 | 15%以上 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好 |
純米大吟醸酒 | 米、米麹 | 50%以下 | 15%以上 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好 |
※原料米は農産物検査法で3等以上に格付けされるか、これに相当する品質のものでなければならない。
※醸造アルコールの使用量は白米の重量10%以下に制限されている。
※「吟醸造り」には明確な定義はないが、精米歩合の低い白米を用い、低温で発酵させることにより独特の“吟醸香”を出す製法をいう。
出典/酒類総合研究所
多種多様な日本酒、日本酒ラバーの人は飲みながら日本酒の味わいについて語るのがお好きですよね。ここでは、ビギナーでもわかりやすいようにそのワードをご紹介します。
日本酒の4タイプ分類日本酒ラベルには造り手のこだわりの原料や製造方法が書いてありますが、よく見ると専門用語のオンパレード。何を買ったらいいかと悩む前に、お酒選びが楽しくなるように、その用語を理解していきましょう。
【ラベル“表”の読み方】
基本的なものと、季節の酒を理解すれば日本酒選びが楽しくなります。
11〜3月頃出荷されるのは、秋に収穫された新米を用いたみずみずしい“しぼりたて”、3〜8月は爽やかな“夏の生酒”、9月〜11月にかけて、旨味ののった“ひやおろし”が出ます。この3つの季節の酒のポイントを押さえておきましょう。
日本酒は、四季折々の味が季節にごとに出荷されます。まさに日本の春夏秋冬そのもの。
これを知っておけば、旬なものを味わう楽しみ方ができそうです。
新酒は7月1日から翌年6月30日までの期間で製造された酒。冬から春先にかけて出荷するみずみずしい「しぼりたて」を指す。
日本名門酒会の企画。旧暦で一年の始まりである2月4日の立春の早朝に搾り上げる杜氏泣かせの酒で、その日限定の縁起酒。
日本名門酒会の企画。花見や歓送迎会で楽しむ春の酒を指す。春の到来を感じるフレッシュな「かすみ酒(うすにごり)」が中心。
日本名門酒会の企画。その年の造りの傾向を把握した寒い時期に、しぼりたての締めくくりとして無濾過で瓶詰めした純米吟醸生原酒。
冬から春にかけて搾った酒を火入れせず、低音熟成させた生酒。搾り立ての荒々しさが落ち着き、爽やかな香りと清涼感あふれる味。
火入れしたものも含む、5〜8月に出荷される酒。通常より酸度を高めたり低アルコールのものや夏を感じさせるビジュアルが特徴。
貯蔵された酒を封切りして品質検査する蔵元の恒例行事。初呑み切りの酒を審査、七夕の頃に程良く熟成する(日本名門酒会企画)。
新酒を一度火入れして、タンクや瓶で貯蔵して酒蔵で「ひや」のままひと夏を過ごし、9月頃に「卸し」た酒。旨味のある味わいが魅力。
日本名門酒会の企画。「ひやおろし」より熟成期間を延ばし、11月頃から出荷される。熟度が増し、まろやかでとろりとした味わい。
前年の酒造年度に造られた酒を「古酒」、前々年度のものは「大古酒」といい、一般的には3年以上熟成させた商品を指すことが多い。
蔵元それぞれのこだわりにより多種多様な日本酒の味が表現されています。
日本酒は通常、アルコール度数を下げるために、瓶詰め直前に加水して調整されるが、一切加水せず醪を搾った後、瓶詰めした酒のこと。オンザロックに向いている。
醪を搾るときに目の粗いメッシュ等で濾し、目をすり抜けた細かいコメの粒子が残って白濁した酒。多くの濁り酒は加熱殺菌されず、酵母が生きたまま瓶詰めされるので発泡性のものが多い。
醪を搾った後、酒質を安定させるために、微細雑菌などを取り除く濾過と加熱殺菌を行わず、加水をしていない原酒のこと。個性豊かで濃厚な味わいを楽しむことができる。
酵母を育てる酒母造りの手法の一つ。生酛の作業工程で最も過酷な作業「酛すり(山卸し)」を廃止したことからそう呼ばれる。濃醇な酒質で燗に向くタイプが多い。
酒母造りの際に酵母を増殖させるのみ市販の乳酸を添加し、それに米麹、酵母、蒸米の順に加え、約2週間で酒母を造る手法。現代の酒造りの主流で淡麗タイプの酒質になりやすい。
加熱殺菌を一切行わない酒。「本生」とも呼ばれ、フレッシュな風味とみずみずしい味わいが特徴だが、酵素類の活性があるため長期保存すると酒質が劣化することもある。要冷蔵保存。
出荷されるまでに、生酒のままで冷蔵タンクに貯蔵し、瓶詰め時にのみ加熱殺菌を行なった酒のこと。生で貯蔵する期間が「生詰酒」より長いので「生酒」同様、フレッシュな風味が特徴。
日本酒は腐敗を防ぐために出荷されるまで通常2回の加熱殺菌を行うが、貯蔵タンクに貯蔵する際にのみ加熱殺菌し、瓶詰時にはしない酒のこと。代表的なものは「ひやおろし」。
日本酒造りの最終段階。この搾る手法や工程で味は全く違うものが出来上がるのです。
伝統的な槽(ふな)で醪を搾るときに圧をかけず、醪の重さだけで自然に出てくる最初のお酒。淡く濁り、香りは華やかで、荒々しくもフレッシュな味わいが特徴。少量しか取れず、希少価値が高い。
「荒走り」がで終わった後に出てくる酒のことを「中取り」と呼ぶ。雑味が少なく、香りと味わいのバランスが取れているため、鑑評会に出品する酒に使われることが多い。
醪を樽で搾る最終段階で最後に圧力を加えて搾りだした酒のこと。最後の一滴まで搾り取るため「荒走り」や「中取り」と比べ、濃厚な味わいになるが、雑味が多くなる。
通常日本酒は、槽(ふね))と呼ばれる搾り機か自動圧搾機で醪を搾るが、どちらも使用せず、醪を入れた酒袋を吊るして自然に滴り落ちたものをとった酒のこと。「雫取り」とも呼ばれる。
搾った直後の酒はコメや酵母等の小さな固形物である「滓(おり)」が浮遊している。通常はその上澄みの透明な部分を使用するが、滓を取り除かず薄く濁った酒のこと。「かすみ酒」と同意。
酒袋から自然に滴り落ちる雫酒を一升瓶の10倍の容量の斗瓶に集めた酒のこと。斗瓶はタンクより小さいので温度コントロールがしやすく高級な大吟醸に使われることが多い。
醪を酒袋に入れて圧力をかけず、自然に滴り落ちる雫酒を集める手法。斗瓶を使用することが多く、酒質は繊細かつ優美な味わいで、華やかな香り。大吟醸造りに用いられることが多い。
醪を搾る伝統的な装置である槽に醪を入れた酒袋を並べて積み重ね、酒を搾る手法。槽から搾りたての酒が出て来る部分を「槽口」といい、「しぼりたて」の別称として使われることも。
いわゆる造り手の研究結果の“こだわり”が出ているこちらの表。
どのようなお酒なのかを理解するためにも下記ポイントだけは押さえておきましょう。
松の葉の穂先を束ねボール状にした、酒林(さかばやし)または杉玉(すぎだま)と呼ばれるこの造形物は、もともと酒蔵が、新酒が出来たことを知らせるためのもの。吊るされたばかりの酒林は青々としていますが、酒の熟成が進む頃には、穂先が枯れて次第に茶色くなります。酒店のほか居酒屋の軒先でも見かけますね。
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