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創業300年の酒蔵で蔵人体験!「酒蔵ホテル」を核にしたまちづくり

2020年春、酒蔵の施設を改装した宿泊施設に泊まりながら酒造りを体験できる、日本初の「酒蔵ホテル」が長野県佐久市に誕生。
この「酒蔵ホテル」には私たちを夢中にさせてくれる魅力が詰まっていた。
※2020年2月末実施「蔵人になれるまちSAKUバスツアー」に潜入しました


KURABITO STAY kurabito stay

酒蔵に滞在・宿泊しながら蔵内で実際に酒づくりをし、貴重な蔵人体験ができるツアーを提供しているのがKURABITO STAY(クラビトステイ)。手がけたのは、地方に眠っている資源を生かし観光客を呼び込もうと考えた、代表でもある田澤麻里香さん。「酒蔵ホテル」の舞台にしたのは長野県佐久市創業300年を超える橘倉酒造。酒蔵敷地内にある広敷と呼ばれる、蔵人が一昔前まで寝泊まりした築100年の建物に新たな息吹を注ぎ込み、蔵人体験に訪れた方の滞在空間にした。田澤さんは、旅行会社を経てソーシャルビジネスのプレゼン大会「みんなの夢アワード」でグランプリを獲得し、兼ねてより構想していた夢の実現させた。現在はKURABITO STAYの活動を通し、地域活性化に挑戦している。

フランスの田舎で学んだ「故郷を想う気持ち」

(女性)株式会社 KURABITO STAY  代表取締役 田澤 麻里香さん

−−信州・佐久の地を選んだ理由は何ですか?

大学卒業後、旅行会社でアウトバウンドの担当としてヨーロッパに日本人のお客さんを送客するというような仕事をし、添乗や企画、手配など約5年間一通り旅行業を学びました。当時、フランス観光開発機構が「地方に行こう」というプロモーションをおこなっていていたため、王道コースをあえて外した地方をめぐるツアーを企画したところとても好評でした。

フランスの地方の方たちは地元のお酒や食材への想いが強く、自分たちの地域文化への強い誇りを持っています。当時、「日本人は“酒(SAKE)”というすごい飲み物を持っているのに、なんで大事にしないんだ」と言われたのを覚えています。

ヨーロッパの地方の方々のように日本の地方もいいものを誰かが引き継がなかれば、人口減少だけではなく、本当に故郷が消滅してしまうのかもしれないと感じました。

本来価値あるものは価値あるままにすることの大切さ、それを強く感じました。
そして生まれ育ったこの地域にたくさんある、価値あるものを大切にしたいと考えました。

夫そして子供、両親の支えで今がある

みんなの夢アワードインタビューより 田澤さんと息子さん

−−埼玉と長野、2拠点で仕事をすることについて

旅行会社を辞めたあとはワインインポーター※1に転職、結婚をし子供を授かったころ、一般社団法人こもろ観光局立ち上げの話が耳に入り、小諸市が立ち上げメンバーを募集していました。条件なども当てはまったため思い切って地域おこし協力隊としてUターンを決意。

Uターンするときは仕事がある夫は都心で働き、息子は私と一緒に小諸に戻り、1年間は週末婚のような形で生活していました。子供は両親に見てもらいましたが、息子もおばあちゃん家に行きたいと言ってくれます。私の夢に協力してくれる家族がいたからこそ、私もここまで頑張ってこれたんだと感じています。

夢が現実に…「みんなの夢AWARD」

みんなの夢アワードインタビューより 小諸大会にて

−−大会の様子はいかがでしたか?

私は旅行会社の経験から、インバウンドを呼びたいのなら広い枠で捉えることが大切だと感じていました。独立後「みんなの夢AWARD in 小諸」という大会への出場に誘っていただき、何かチャンスを広げるきっかけになるかと思い出場を決めました。そこで運よくグランプリ受賞。その後2019年2月に行われた全国大会では、全国各地からたくさんの素晴らしい夢が集まっていましたが、なんとその舞台でもグランプリをいただき、それがもう本当に奇跡でした。

工事中のKURABITO STAY(宿泊施設)を見学
皆で語らいあう場所に
かわいい小部屋で宿泊

全国大会で優勝したことで様々な協賛企業の皆様が事業の実現に向けてお知恵をくださいました。KURABITO STAYの施設リフォームは、古民家を活用した新規性の高いビジネスで地域振興に貢献できるということもあり、国からも地元の行政からも多大な応援をいただきました。

KURABITO STAYについて

左:KURABITO STAYロゴ
右:KURABITO FRIENDLYロゴ

−−会社のブランディングについて

KURABITO STAYのネーミングは、外国の方を呼びたかったのでわかりやすく覚えやすい横文字に。ロゴ・ホームページは地元佐久出身デザイナーさんが担当してくださり、海外の方にも好評です。

KURABITO STAYを通し一番叶えたいことは“まちづくり”です。お客様に地域に長く滞在いただきたいので、KURABITO STAYに参加された方が、橘倉酒造の敷地を一歩出たら、飲食店で「ノーイングリッシュ」って言われてしまうことがないように、飲食店の皆様と英語の勉強会などを開き、まさに“まちぐるみの事業”に成長しつつあります。

蔵人体験&酒蔵めぐりバスツアーでの田澤さんと井出さん

−−橘倉酒造さんとの出会いは?

また、ビジネスパートナーの橘倉酒造は、(一社)こもろ観光局で酒めぐりのバスツアーを企画した時からの繋がりがありました。専務の井出平さんとは、観光局を独立した後も交流があり、英語同時通訳で“酒造り体験”ができる場所を酒蔵の中に作って国内外の人のデスティネーション(目的地)になる、ここを核にして地域が元気になる、そういうのやりたいねと意気投合したのが一番はじめのきっかけです。

井出さんはとても喋り上手で、お客様から「日本酒の造りの工程がすごくよくわかりました」と大好評です。

ツアー参加者が使用するKURABITO FRIENDLYのロゴマークを使用した手拭い

この“まちづくり”は、KURABITO STAYと橘倉酒造が中核法人を務めるSAKU酒蔵アグリツーリズム推進協議会「KURABITO FRIENDLY」でも取り組んでいます。「KURABITO FRIENDLY」のロゴマークは、一つのマークの提灯を元に、みんなでその灯りを街にどんどん増殖していこうっていう意味合いがあります。今日つけていた手拭いもそのロゴマークを使用したデザインです。

「蔵人になれるまちSAKUバスツアー」(2020年2月開催)

ツアー参加者の様子。みなの笑顔溢れる楽しい雰囲気の体験ツアー

−−ツアー実現までの経緯を教えてください  今回の一泊二日のツアーとしてはありがたいことに満席になりました。最初この地域の相場よりは高めに設定しているので少し不安がありましたが、今回のように多くのお客様に参加いただけたことは私たちにとっても、地域にとっても、大きな自信となりました。

試飲と地元の美味しい食が参加者の楽しみのひとつ

今後販売していく基本プランは二泊三日のワンセット。この地域に長く滞在していただくことで、お客様には地域の魅力をより味わっていただくチャンスになればと考えます。地域の商店街がこの「酒蔵ホテル」を核にして元気になってほしいと思っています。 今回のツアーは首都圏のお客様を中心に、遠くは西日本からも日本酒に関心の高い方が参加してくださいました。日本在住の外国人の方も数名参加してくださり、とても嬉しく思います。 私はこの地域の出身ということでゼロスタートではありませんでしたが、最初は慎重だった地域のみなさんも私の熱意を感じてくださり、快く賛同してくださったことに感謝の気持ちです。

日本酒をさらにたのしむきっかけに

ツアー参加者には最後に蔵人体験修了証とKURABITO STAYオリジナル日本酒をプレゼント

私たちが主催するツアーは、国内外問わず、日本酒が大好き!日本酒に興味がある!という方にぜひご参加いただきたいです。日本酒の“造り”を知ると、いかに繊細で丁寧に造られているかがよくわかりますし、神聖な空間での職人の動きや感性に感動します。体験後は日本酒がさらにおいしく感じることができます。

このKURABITO STAYを世界中の多くの方々に利用いただき、日本酒の素晴らしさ、そしてこの地域を活性化し、日本を元気にしていきたいと思います。

※1世界のワイン生産者やメーカーから日本国内へワインを輸入する職業

編集後記

ついに完成!築100年の酒蔵をリフォーム「KURABITO STAY」

取材が終わり3月末頃、田澤さんの想いと夢が詰まった宿泊施設「KURABITO STAY」がお披露目となりました。蔵人が一昔前まで寝泊りをした築100年の建物が息を吹き返したように、現代風にでもどこか懐かし雰囲気を漂わせたモダンな宿泊施設になりました。

OSAKE編集部もぜひ足を運んでみたいと思います。
みなさまもぜひチェックしてみては?

「KURABITO STAY 完成お披露目会」
https://kurabitostay.com/blog/info/kawaraban/kanseiohiromekai/

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