パッケージデザインとの出会い
初めてのお酒パッケージデザインは2012年の「大信州酒造 みぞれりんごの梅」。商品名から一緒に考えました。最初書いたりんごは丸い形でしたが、このお酒に使われているふじりんごに形を近づけ、あとは本当に自由にやらせていただきました。
梅・日本酒・りんごが長野の空に入ったイメージです。
紙も切りっぱなしの和紙にこだわり、この「消しゴムはんこ」も私が掘りました。
このお酒は“ジャケ買いされるお酒”として人気のようで、梅酒の大会でも、パッケージデザインも込みで8位になったそうです。
デザインもお酒も毎年違うものに
それから、大信州酒造とのアートラベルの取り組みが始まりました。
当時、日本酒のアートラベルはとっても新しかったんです。ワインは昔からアートラベルは存在していましたが、日本酒は「書」がメインだったため、アートラベルがシリーズ化したものは面白いかもというアイデアからスタートしました。
私も、 “この年のこの作品”という感覚でデザインをしています。
デザインも毎年違う作品が生まれるように、お酒も毎年味が変わります。
試飲して描くのではなく、その年のインスピレーションで作品は生まれます。
まさに、「大信州の創作活動と越ちひろの創作活動の融合」です。
私がいい作品を描けなかったらその年のお酒は出さなくてもいいと言ってくださるほど、田中社長も本気で取り組んでいただいています。
“花宙(ハナソラ)”の誕生
田中社長から、越ちひろアートラベルのお酒は“花宙”という名前にしたいけど、どう?と言っていただけました。それから私の描くアートラベルは“花宙”をテーマに、毎年どんな作品が描けるのか挑戦しています。紙選びや色校など、本当に自由に時間とお金を描けてやらせていただいています。
きっかけはいつでも“絵”が繋げてくれる
大信州酒造のデザインをするとき、田中社長と長野市の酒屋「ハトヤ」さんと3人で打ち合わせをします。この出会いも、2010年頃からお店の壁画を描き始めていましたが、そのレセプションで私の作品を見たハトヤさんが、大信州酒造を紹介してくれたことから始まりました。
そして、地元千曲市にある料亭 柏屋の柏屋オリジナルの日本酒「柏屋 純米」のデザインも手がけさせていただきました。柏屋さんの家紋が柏の葉で、現在16代目のため、16枚の葉っぱを描いて欲しいというリクエストがあり、キラキラ感を残しつつあえて絵の具ではなく色鉛筆で描きました。
今まで、日本酒のデザインパッケージは大信州酒造と柏屋をデザインさせていただきました。今後は他の日本酒だったり、ワインのラベルにも興味があります。
花宙 2014年(右)2015年(左)
マット紙を使用し、原画のカラーが一番綺麗に見えるものに
花宙 2016年(右)2017年(左)
ワインパッケージを意識し紙はパール紙を使用
花宙 2018(右)2019(左)
赤いラベルにしたかったのと和の要素を出すために適した和紙を使用
箱もデザインし、大信州の文字もイメージを変えるピンク色に
原画となる作品を描くだけ
私は、基本的に「デザイン」はできません。
あくまで、原画となる作品を描くだけ。絵を描いてデザインにはめ込むための絵を描いているんです。それはお酒のパッケージデザインをするときもそうで、パッケージ発想ではなく、テーマがあって、それによってどんな絵を描けるか。他の作品を作るときと同じ感覚で描いているので“欲しくなるラベル”であって欲しいと思います。
越さんのお酒事情
基本的にはなんでも飲みます。
昔はワインが好きでしたが今は日本酒も好き。
多忙のときは飲まないですが、外で仲間と飲むのは楽しいです。
大信州さんのアートラベルを担当させていただき始めてからの6年間、大信州を飲み続けていたら大信州が好きになりました。
今後の活動について
2019年実施した『ミライノ色 ミライノ光 ~まちじゅうが美術館~』は、のべ2万人の方にご来場いただきました。千曲市で現代アートの展覧会は初めてなので、その中でたくさんの方々が千曲市に足を運んでくれたのは本当に嬉しいです。
この個展の最中、起きてしまった台風19号の被害。被災された方々には無料でご招待しています。アートは空腹を満たしたり怪我を治すことはできないけれど、アートの力で少しでもいい時間を過ごせるように、そんな想いです。
個展中は千曲市にこもりっきりでしたが、来年以降は、県外や世界を視野に、少し遠くまで足を伸ばしていきたいと思っています。