PEOPLE旬な人

日本酒で挑戦し続ける跡取りユニット

“同じ時代を生きるライバルだからこそ同じ想いを共有し合う”。
ゴクジョウの酒を醸し、ゴクジョウな日本酒の未来をつくるために挑戦をやめない、それが59醸


59醸 gokujo

5人からなるユニット「59醸(ゴクジョウ)」
信州59年醸造会、通称「59醸(ゴクジョウ)」は、昭和59年度生まれの長野県の酒蔵跡取り5人が、同じ時代を生きる仲間であり、ライバルであるからこそ同じ想いを共有し、 「この年代だから造れるモノを生み出そう」と結成。メンバーが40歳になるまでの10年間、毎年テーマを変えたオリジナル日本酒「59醸酒」のリリースや様々なイベント企画を通して、 伝統ある日本酒文化を次の世代に継承していく。ゴクジョウの酒を醸し、ゴクジョウな日本酒の未来をつくるために59醸は、挑戦し続けている。

昭和59年度生まれが集結

59醸リーダー 角口酒造 6代目 村松裕也さん

59醸リーダー 角口酒造 6代目 村松裕也さん

10年くらい前、広島で勉強をしたときに59年度生まれの福島県の酒蔵の跡取りと知り合い、全国には同い歳で跡取りであり酒造りをやっている人が多いことを知りました。そこで、一度東京で59年度生まれの酒蔵跡取りを集めてみました。その場に集まったメンバーの中でも、長野県の59年度生まれの多さに気づき、その仲間で何かできないかと発案したのがそもそもの始まりです。
長野県内の一通りの蔵に声をかけたところ5人が揃い、のちに59醸メンバーとなりました。毎年オリジナルのお酒を作って同時リリースをしていく企画をしたいと話をしていましたが、進めていく中で、世の中にちゃんと発信していくにはトータルプロデュースが必要だということで、現在デザイナーをやってくれている轟理歩さんと出会いました。
ラベルデザインやホームページ、「59醸」というユニット名の名付け親でもあります。その裏でボツ案もたくさんありましたが、それは伏せておきます(笑)

5人が生み出す“極上酒”

2019年実施 秋の大感謝祭

2019年実施 秋の大感謝祭

2019年実施 秋の大感謝祭

59醸の大きな柱としている活動は全蔵が同じテーマ、同じ原料で毎年“59醸酒を造る”というもの。その発表会を兼ねたイベントを毎年春頃に大々的に行っており、秋には1年間の活動報告のイベント「59醸感謝祭」と称し、ゆるく行なっています。
皆長野県産の水やお米を使っているためスペックが同じように見えますが、蔵の方針や設備が違うだけで同じ原料を使っていてもこんなにも違うものができるんだということを表現したかったんです。期待した通り、全く違うものが毎年出来上がります。
2019年の現時点で発足5年目なので今まで5作品ずつ発表してきました。
それ以外は、イベントや全体ミーティングなどを月に1回以上の頻度で行っています。
発足まもない頃は皆が59醸の活動がメインになっていましたが、現在は蔵ごとで役職も変わったり、住んでいる地域における立場や役割が変わったり、家族が増えたりと、ライフスタイルが変わってきました。
そのため、59醸メンバー皆が揃ってイベントに参加することが難しいこともありますが、各自役割分担をきちんとすることで確実に59醸を全国にアピールしています。

2019年の59醸酒テーマは“道なかば”

59醸の活動期間はメンバーが40歳になるまでの10年間。2019年は真ん中の5年目でちょうど半分なので、59醸酒のテーマは“道なかば”。中間テストと題し、各蔵ごとオリジナルの59醸酒を造りました。今回は、1年目に使った酵母と同じものを使用しました。通常、この原料をどうやってアプローチするかの答えを見い出すのに時間がかかりますが、1年で造りあげるということで毎年手探りです。ただ、その蔵ごとの特徴がよく出ているので、そのときに飲んでくれたお客さんの意見などを聞き、翌年の59醸酒造りに活かされます。

2019年発表 59醸酒

角口酒造店

角口酒造店
角口酒造店

丸世酒造店

丸世酒造店
丸世酒造店

西飯田酒造店

西飯田酒造店
西飯田酒造店

東飯田酒造店

東飯田酒造店
東飯田酒造店

沓掛酒造店

沓掛酒造店
沓掛酒造店

今しかできないことを、今やる

我々は決して完成されたグループでありません。
日本酒の世界では、40歳までが若手で通用するギリギリライン。
だからこそ、59醸を30〜40歳のうちの10年間と設定し、若手と呼ばれる今のうちにたくさんの失敗をし、たくさんの新たな挑戦をする。今年行ったワイナリーとのコラボイベント、醸々(JOJO)なども、今しかできないことだからこそ挑戦しました。
地道な活動のおかげで、東京などにいくと「北光正宗の村松さん」ではなく、「59醸の村松さん」と言われることの方が多いです。ユニットを組むことで、一蔵では獲得できないお客さんにリーチできたりと、メリットもたくさん実感しています。
59醸のイベントに来てくれるお客さんは若い人が多いです。若い人のお酒離れが騒がれていますが、お酒を楽しむためには色々飲んで知っていくことが必要なのである程度の年月が必要だと思うんです。なので、そういった方への選択肢の提案としても59醸のお酒を選んでいただければ嬉しいです。

長野県のお酒はより特化していくべき

長野県は、全国と比較すると大きい酒蔵が少なく、蔵の数が多い(全国第2位)のが特徴で、多くの蔵が家族経営です。だからこそ、量で挑戦していくのは限界があるので自分たちにしかできないことを見い出し、それに特化していくべきだと思っています。
59醸の活動はまさにその考え方の縮小版です。
良質な酒米と良質な水という原料をすべて自県で賄える長野県であるからこそ、原料やスペックに頼った商品展開でなく、自社の強みや個性を最大限に発揮できる場が必要であると考えています。
59醸は試験的なユニットであるため実験的な試みを行うことができますので、この活動を通して各社の次のステップへの道づくりとなれればと思っています。

今後の活動について

5年経って、ありがたいことに私たちのことを知ってくださる方は多くなりました。
これまでの活動の経験を活かしてまた違った戦略を考えたり、よりチャレンジングなことをしていかなければと思っています。10年経って40歳になったとき、私たちも59醸を解散してからが新たなスタートなので、次のステージにいかなければと思います。
解散後59醸がやってきたような活動は、さらにその次の世代の方々がもっと柔軟な発想でいろいろとチャレンジしてくれることと思います。

そして、2020年の59醸酒のテーマは“すごい6年目”を略して「すご6(すごろく)」。10年間の活動期限の半ばを過ぎ、新たなスタートである6年目なので、また新たな気持ちで取り組みたいです。使用米も1年目と同じ「美山錦:精米歩合59%」を使います。ふりだしに戻ってしまうのか、大きくマスを進めることができるのか、ぜひ、ご期待いただきたいと思います。

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